「疎」

朝食の後、毎日40~50分ほどお散歩をしています。今の季節は路傍にフキノトウや福寿草、タンポポが咲き始めているのを眺め、増えてきた鳥の声を聞きながら春を感じています。ウグイスの初鳴きも一昨日ありました。ただ、そのお散歩中に他の人と会うことはありません。今が特別なわけではなく、いつものことです。なにせ人口密度が低いのです。通勤する人が乗る車と2,3台すれ違うくらいです。

東京の大学に進学し、最初に朝の満員電車に乗ったときのことを今でも覚えています。とにかくぎゅうぎゅう詰めで、それまで人とそういう接触をしたことがなかったので、かなり衝撃的でした。ひどく全身に力が入り、電車を降りたときは疲れてぐったりしていました。しかし、慣れとは恐ろしいものでやがてそれをやり過ごす術を身につけました。私の場合は、文庫本を読んでその世界に没入し、その他の感覚を遮断することでした。ですから、電車の中ではかなりの集中力で読書ができました。

満員電車と似たような状況になりそうなのがエレベーターでしょうか。それにしても、弟子屈町には3階建ての役場庁舎と4階建ての農協ビルに一基づつあるだけで、私はそれらに乗ったことがありません。

会社以外でもっとも他の人に接近するのが、銀行かスーパーです。でも、銀行も最も混む年金支給日に行っても、キャッシュディスペンサーに並んでいるのはせいぜい3,4人です。スーパーも私が行く夕方はそれほど人は多くありません。

北海道はコロナウィルスの感染者が比較的多いことになっていますが、実はそのほとんどが札幌周辺です。北海道は14の振興局という行政区分に分かれていて、感染者の数もその区分ごとに発表されています。弟子屈町は「釧路総合振興局」で、1市・6町・1村で構成されていて、面積はおよそ茨城県と同じくらいの広さです。そこでの感染者はこれまでのところ、19人です。そのほとんどが釧路市周辺の医療関係者で、しかも4月16日を最後に感染者は出ていません。私の知る限り、弟子屈町でもまだ感染者はいません。

今回のコロナ禍がまだ収束した訳ではありませんが、ネット上で複数の「アフター・コロナ」、「ポスト・コロナ」の記事を見かけます。それらのほとんどが主張しているのが、テレワークなどによる会社に行かない仕事の仕方が増えるだろうといくことです。過疎化の進む田舎に住む身として、やはり大都市への過度の集中は是正されるべきだと思います。

実際、ネット回線さえあれば仕事が出来るとのことで、北海道に移住されてくる方がこれまでもいましたし、最近は首都圏の会社の機能を少し分散させる意味合いでこちらに拠点を作るという方もいます。

とにかく、「密」とは真逆の北海道です。まだまだ人を受け入れる余地は残っています。