摩周湖の透明度

本州の旅先で、「北海道の弟子屈町から来ました」と言っても、大概の人はピンと来ないようで、そんなときは「摩周湖のある町です」と言うと「ああ・・」とわかってもらえます。さすがに摩周湖の周知度は高いです。その透明度は日本一ですし、なんといってもある程度年輩のひとなら、布施明さんの歌う「霧の摩周湖」を知っています。そんなわけでかつて、町名を「弟子屈町」から「摩周町」に替えたらどうだという議論が起きたことがありました。さすがに良識のある人達が反対して、そんなことにはなりませんでしたが。「弟子屈」も歴史ある立派な名前で、それをただ単に知名度が高いから「摩周」に替えてしまうというのはあんまりです。ただ、JRの駅名は1990年に「弟子屈駅」から「摩周駅」に替わっています。そんなことで観光振興に効果があったのか疑問に思いますが。

さて、透明度日本一の摩周湖ですが、その透明度を測る調査の継続が問題になっています。これまでは国が予算を付けて実施していた透明度調査ですが、2018年を最後に国の予算が付かなくなったそうです。これほど環境問題が重要視されている時に、湖沼の透明度という重要な環境指標の調査をやらないというのは、国は何を考えているのでしょうか。甚だ疑問です。

湖沼の透明度などを調べる際、拠り所となるのが「理科年表」です。国立天文台が編纂し、毎年発刊される自然科学分野のデータブックです。私は子供の頃、この理科年表をみるのが好きでした。自分の住む町にある湖が、透明度日本一を誇り、かつては世界一を記録したこともあることを、理科年表をみながらうれしく思ったことを記憶しています。その他にも山の高さだったり河川の長さだったり、あるいは各地の気象データだったり、一種のランキング本をみるような楽しみがあります。今でこそ、インターネットで様々なデータベースにアクセス出来ますが、その昔は理科年表が頼りでした。

自然科学分野のデータは継続して取ることが大切です。結局、現在は弟子屈町を含め摩周湖周辺の自治体5町村(清里町・別海町・中標津町・標茶町・弟子屈町)が「摩周湖環境保全連絡協議会」を立ち上げ、クラウドファンディングも活用しながら摩周湖の透明度調査を続けています。摩周湖は神秘の湖と言われるだけあって、なかなかに人を寄せ付けない厳しい地形にありますから、その調査は容易ではなく、資金も掛かるのが調査の動画でもうかがえます。クラウドファンディングはこちらから。ぜひご支援をお願いします。